・はじめに 「Gardening」。20年前は、まだこの言葉が一般的ではありませんでした。 しかしここ10年で園芸は「ガーデニング」として生活に定着しつつあります。 園芸培養土は、園芸の専門家から、20代前半の若者や主婦層にいたるまでの幅広い層への需要の広がりをみせました。用途面においても、家庭の庭をはじめ、造園事業、営利栽培農家の現場まで幅広く活用されています。そうした、用土市場規模の拡大に伴って、品質に格差が生じる問題などがしばしばみられます。 園芸の専門家はもちろん、日々の暮らしのなかで「季節を楽しむこと」を目的としているガーデニングビギナーにとって、土での失敗は、せっかくの「ガーデニング」に対する興味を腐らせてしまうようなものです。
家庭園芸肥料用土協議会は下記のような目的で事業をすすめております。 その活動内容は、平成11年7月の総会より、 「園芸がガーデニングとして生活に定着し、家庭園芸肥料に関しては問題も少ない。しかし、用土の方面は混乱しており、流通しているものの品質の格差は大きく、基礎資材としてはまだまだ問題が多い。今まで自主的に品質・内容表示もしてきたが、協議会としてさらに状況を確認し、調和を図る必要があると判断。用土への取り組みを深く取り上げ、今総会において協会の名称に用土を含む」 また、園芸普及のための活動として、消費者への啓蒙活動としてのパンフレット“園芸肥料ABC”を今回“園芸肥料と用土のABC”に改定して作成。園芸用土の表示について所定の品質表示をこのパンフレットに“推奨表示”とし、明記しました。 このパンフレットは5万部印刷します。3万部を会員会社での啓蒙に利用し、2万部はイベント等で一般配布予定となっております。 以上のように、現在の家庭園芸肥料・用土協議会は活動しております。 家庭園芸肥料・用土協議会の推奨表示 ・用土委員会で推奨表示を作成 その「推奨表示」を作成のために当たった用土委員会は平成8年11月発足し、まず問題となった「用土の定義」から取り組みました。当初は配合土の業界の大きさや、用土を直接管轄する省庁も明確でなく苦労の連続でしたが、その方向性として、「消費者にとって解りやすい基準」となることを重点にすすめました。それは、関係の皆さんとともに、基本的な推奨を明確にし理解を深めることであります。そして、“生産するメーカーは良質な製品を生産すること”、“販売する側の皆さんには良いものをしっかり選択していだだくこと”、それこそが、良い商品をより多くの消費者へ届ける近道であると信じております。
ここで植物がよく生育する良い用土に比べ、植物の育ちの悪い用土はどんなものかを整理してみます。 ・理化学性について pH不適切 EC不適切 肥料分(極端に多かったり欠乏を起こすもの) 使用原料の規格が不適切(堆肥の熟度など) 異物の混入 C/N比の不適切 ・表示関係 内容表示がない 原料名表示なく原料不明 使用方法表示なく使い方不明 製造メーカー名の不備 ・その要因の可能性として考えられること 製品検査の不備 販売競争によるコスト圧縮 歴史が浅く、目安とする基準なし 法律等による制約がない 需要集中による生産工程圧縮 需要集中による安易な委託 流通段階での変質 ・園芸業界に固有な問題は 用土業界は日本全体の年間出荷量や生産量を把握できるデータは非常に少なく、実際にはほとんど把握されていない状況です。現在はピート主体の軽い土や、その地域特有の土、堆肥を主原料にしたものまで、さまざまな種類が販売されております。その用土の推定市場規模は300億とも500億ともいわれております。そのうえ生産メーカーも全国展開するメーカー、地域の小規模なメーカー、また、10人規模から500人以上の上場企業の園芸部門として取り組んでいる会社まであります。このように数多くの形態の生産者が存在しています。 また、園芸用土は春の苗物や野菜苗などが出回る季節に合わせ、需要が大きく膨らみます。 供給が間に合わない場合など、品質管理に問題があるのも実状といえるでしょう。特に良いものを作るのに時間のかかる有機を原料とするものに重要となります。 もう一方で、そうした取り止めのない実状とは対照的に、学会、農業生産技術など個々をみてみますとそれぞれしっかりした根拠にもと基づいた技術や知識の蓄積があります。 とすれば、関係省庁、学会と連携をとったうえで、正しい基準となるものを定めることが可能です。私たちの業界は消費者サイドの意見を取りいれ、規模や園芸業界の実状に合わせ、知識経験を標準化していくことこそが大切な点だと考えます。 ・消費者に「より使いやすく」するための基準化とは? ある一定の基準値で規格化した土を「良い土」として一概に評価することは難しいといえます。園芸の専門家であれば肥料分、乾燥に対する強さや、最適なpHなどを植物により最適に合わせることができますが、多くのビギナーには非常にむずかしいこととなります。 この園芸技術的な知識をよりわかりやすく伝えることが、まず必要です。 ・適正な用途の明示と培養土の分類を明確にする 下記のようなデータに基づく基準化は農業試験場などの機関からも公表されています。 例えば、素焼き鉢とプラスチックなどの鉢の違いによる用土の乾きやすさや、キンギョソウとパンジーのECによる感度の違いなど、それぞれの条件に合った良い土は異なります。 何にでも使う汎用性のある土であればあるほど低ECにpH範囲を中性に近くに守る必要があり、より速く生育を期待したいときには、対象植物に限定した商品を作成する。つまりこれが消費者に向けて“用途に合わせた最適なものを伝えること”です。 このためには、購買時点で消費者と直接交流する小売店さんの協力や、そこからの新鮮な意見は見逃せません。
一般的には小松菜の発芽試験などの生物検定をロットごとに確認する方法が一番簡単で効果的といわれております。 さらに、最近は簡易型反射式光度計が10万円以下で手に入るようになり、窒素などのそれぞれのイオン養分濃度も簡単に測定することができるようになってきました。 ・結び、今後の家庭園芸用土の発展に 今、あらゆる企業が生産、流通、使用、破棄と、生活サイクルすべてにわたった“環境対策”に労を困じています。そうした環境問題が叫ばれる時代、作りっぱなし、売りっぱなし、という時代は終わりました。販売した商品に最後まで責任を持つことは、メーカーとしての義務でもあります。植物が自然のサイクルのなかで循環するように、商品もまた繰り返し使えるものでありたい。これは、容器リサイクル法、一般消費財を扱う業界としては避けて通れないことでもあります。 まして自然との共存が喜びであり、楽しみでもあるガーデニング愛好者の皆様にはなおさらのこと。例えば、古くなった土の扱いを再利用するための「土の再生材」等は、時代のなかで生まれるべくして生まれたものでしょう。 繰り返してしまいますが、家庭園芸を成功させる決め手は「土」です。どんな草花も野菜も、土に力があるほど養分をうまく吸収することができ、元気な花を咲かせ実をつけます。土こそが植物の生育のための基本と考え、花のため、お客様のためであり続けることにこだわり、今後もお客様の声にしっかりと耳を傾け、買っていただいた商品をきちんとアフターケアすることが大切と考えます。 最後になりましたが、当協議会用土委員会にも用土に関するご意見やご要望があれば何でもお寄せください。皆さんとごいっしょに考えていきたいと思います。 |